自衛隊中央病院が見出した治療法が日本の標準に
ダイヤモンド・プリンセス号からの感染者109人、全員を治癒
新型コロナウイルスと闘った、治療の開拓者の記録。
2020年1月から2月にかけ、自衛隊中央病院が受け入れたのは、ダイヤモンド・プリンセス号から搬送された感染者109人と武漢から政府チャーター機帰国の感染者及びその疑いのある有症状者11人の計120人。
同病院医療チームの重症者対応班は、「発症から約1週間は、ウイルスによる重症化だが、その後は、免疫過剰による重症化へと移る」、つまり2つの流れがあると考えた。それが切り替わる瞬間なら、免疫抑制の全身性ステロイドを投与してもいいはずだと。
その瞬間を知るために、血液そのものをPCR検査し、陰性と出た者に投与した。日本で初めての治療の流れだった。
この治療法は、同年6月になって英国オックスフォード大学が、ステロイド投与に効果があったと発表。また、現在、日本の標準治療となっています。
新型コロナウイルスとの闘いが始まったばかりの時、医療チームは、どう考え、どう迷い、決断し、治療したのか。その記録は、我々が将来再び未知のウイルスに襲われた時、きっと役立つと信じます。
第1章 三つの不安を越えて/自衛隊初出動は武漢からの帰国便
同乗
第2章 ダイヤモンド・プリンセス号へ/衛生隊乗船の前夜
第3章 乗船者3700人の命と暮らし/陸海空の混成部隊で支援
第4章 PCR検査、陽性者続出/検体採取と結果報告の医官たち
第5章 知られざる空港検疫支援/検体採取をひたすらお願い
第6章 海図なき船出/医療チーム指揮官の決意
第7章 日本初、血液をPCR検査/治療の開拓者たち
第8章 奇跡の陰で/未来へつなぐもの
プロフィール
1974年朝日放送入社。報道局プロデューサー兼ディレクターとして数多くのドキュメンタリー番組を手がける。97年、横田めぐみさん拉致を突き止め、その経緯と家族たちの苦悩を描いた『空白の家族たち』で新聞協会賞。2006年、アスベストによる健康被害を掘り起こし被害実態と救済を社会に訴えた報道で第一回科学ジャーナリスト賞。現在はフリーランスのジャーナリストとして活動。
著書に『金正日の拉致指令』(朝日新聞)、『これでもシラを切るのか北朝鮮』(光文社)、『横田滋・早紀江夫妻 めぐみへの遺言』(幻冬舎)。
石高健次 著
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